東京の男の子

東京の男の子

 サブカル女の卒業式(一人卒業してないし、もう一人は女ですらないが)。というのが読んでの第一の感想でした。サブカルっていう言葉でくくると語弊があるけど、自意識?「私って変わってるていわれるんです」女?そんな女たちの超本音トーク集。
 えーと自分語りしますと安彦麻理絵はデビューした当時から読んでいて、すごい同時代感がある。そんで、この人の立ち居地にもすごい勝手に共感していた。だって例えばこの本だと一緒にいるのが魚喃キリコ(超絶美人)と大久保ニュー(オカマ)だよ?こんな「ザ個性」を目の前にしたら「インタビューされる人になりたかった」と思っていた少女はどうなる。
 スペック的にはフツーの、あくまでフツーの安彦麻理絵は結婚して出産して離婚して再婚して出産という、出来事的盛り上がりを経て「特別になりたい」を卒業したように読めた。でも「特別になりたい(思春期的自意識)」から「でも自分はフツー(経験や加齢による客観視)」へ至るまでって相当だけどね。負けた感を認めないといけないし。でもそれって通過儀礼だろうなあとは思う。いま身近な20代後半の女子とか見ていると「生きるの大変そうだなあ」と思ったりするもの。そんで自分もそれを通過したこと忘れてるもの。でも最近の若い子って、早いうちに自分のこと客観視してあきらめるじゃないですか。あれもどうなのかなーって思う。恥じかけるのは若いうちだけなんだから遠慮せずに色々やっちゃえばと思うんだけどなー。えーと、自分語り終了。
 タイトルに偽りありで男の子の話はちょっとしかないのですが、そのちょっとがすごい。つうかひどい。19人の男の子スナップを肴にこの男ならやれるやれない、またはセックスの傾向の妄想。でも映画監督になりたいというカッコメン男子に「顔のいい映画監督は大成しない」「映画監督は自分自身が引き立っちゃダメ」という話には深く納得した。
 あと卒業できていない、ていうかこじらせている魚喃キリコのカミングアウトぶりがすごい。うつ、酒びたり、ギタリストしか愛せない、ヒモを養っていた、パニック症候群、リスカ。最後のリスカが一番ひいた。30女のリスカって…。でもそこで帯の文句「不幸な男女が絵になるのは20代まで!」になるのか。リスカがオチか。