ブラックスワン
アメリカ公開*1から結構時間空いての日本公開なのでもっと地味展開かと思ったら、怒涛のCMラッシュ*2でちょっと辟易しながら見に行きました。が、かなり面白かったです。ていうか、よく出来た映画だなーと思いました。
以下、ネタバレ&監督前作「レスラー」のネタバレもします。
「ライバルが出てきてノイローゼになるんでしょハイハイ」とCMであらかた話わかったつもりでしたが、実際見てみると対ライバルというよりは対自分の展開でした。今までのセオリーでいくと、幻聴とか幻覚ってもっと他者からの攻撃が主だと思いますが、「風呂で目をつぶってると襲ってくる自分」「地下道ですれ違う自分」「クラブのフロアで回り全部自分」とか、とにかく自分がいっぱい。しかし、私は対ライバルのお話だと思いこんでいたので、最後に控室でヴァンサンカッセルから「自分を壊すんだ」と言われるまで、この映画のテーマがわかってませんでした。なので、そこから物理的に自分を壊すシーンまでのエウレカ感ったらなかったです。
あとニナは、清廉潔白というより臆病ゆえのノイローゼっていうのが面白かったです。何に臆病かと言うと、やっぱり「壊れた後に出てくる自分」ですよね。そのわりに先輩のもの盗んだり、すぐ泣いたりするので欲の強いところはすでに染み出してんじゃないの、と思いました。
ラストが「レスラー」と一緒とは結構言われてると思うんですが、ニナは「レスラー」のランディと違って「人生がステージの上だけしかない人」ではないと思ったんですよね。壊したのはバレエの技術を思い切り発揮できない自分だけではなく、親に対する自分とか周りに対する自分でもあった。だからあそこで終わるのではなく、一皮向けて生き続ける人であってほしいと思いました。なのであのラストにはちょっと違和感。
バスルームに何もないのを確認して、泣きながらメイクを直してるシーンで終わってくれたら最高だと思いました。ランディと違うところ、なんつうかこういう表現であってるかわかんないですが「女のしぶとさ」を見せて欲しかったなあと思いました。